_殿(朝来市) 竹田城の里山 散策路で生物多様性を考える

朝来市の竹田城跡へ登城する時、ほとんどの方が、約1.8kmの西登山道を利用されていると思います。

この西登山道は、山城の郷から中腹駐車場まで伸びていて、竹田城のある古城山までの尾根道を、里山をめぐるように進んでいきます。

西登山路の途中には、散策路の看板がいくつか設置されていて、まるで里山の中へと、小さな径(みち)が誘っているようです。

この里山の散策路の周辺には、たくさんの生き物が生息しています。

しかし今年の夏は、ちょっと違いました。春先から気温の変動が激しくて、昆虫の仲間のカブトムシやクワガタムシの数も少なかったようです。

特に今年の7月から8月の猛暑の影響からか、チョウの仲間も少なくて、9月頃からようやく、その姿を見つけられるようになりました。

散策路の木の階段で、いつも出逢うモリアオガエルとも、今年はご無沙汰なようで、産卵したときの卵槐は確認したのですが、大人になったモリアオガエルには遇えませんでした、エサになる小さな虫が少なかったのでしょうか。すこし心配です。

この里山の一部は土砂流出防備保安林になっていて、保安林ですから許可なく伐採はできなくなっていますし、ゴミなどの投棄やポイ捨て行為には、もれなく1000万円の罰金がついて来ます。

高知県の西部の四万十川流域では、今年の渡り鳥の飛来数が、減少したようだと発表されています。

四万十川流域では、ツバメやアマサギなど身近な野鳥が激減したと報告されていますが、兵庫県でも同じように、ツバメたちが電線に止まった大群は皆無で。10年前に比べ半減してしまったようです。

ツバメやコシアカツバメの巣が、留鳥のスズメに巣を乗っ取られた例もあったようです。

四万十川流域では、田植えの時期に水田に群れるアマサギはわずかしか確認されなくて。

ウグイスや猛きん類のサシバも例年より少なく、フクロウ類の鳴き声はほとんど聞こえなかったそうです。

また針葉樹に止まって美しい鳴き声を披露し、夏鳥の代表格に挙げられるオオルリは、まとまって飛来することがなくなり、ほとんど姿が見られなくなってしまったようです。

竹田城の里山では、ウグイスの数も多く、猛きん類のサシバも例年と同じように繁殖していて、安心しました。

そしてフクロウの鳴き声も、冬頃から聞こえていまして、先にご紹介した、乳ノ木庵の銀杏の巨木の周辺で、営巣していたようで、かなりのうるさいくらい深夜に鳴いていました。

また早朝に針葉樹のてっぺんで美しい鳴き声を聞かせてくれる、青色の夏鳥の代表のオオルリも、飛来して子育てしている姿が見られました。

これから飛来して来る冬鳥についても、注意深く生き物の調査をしておかなければいけません。

10月始めの散策路では、木立のあいだから、じわがれた「ジェーイ」とか「ジォーイ」と、鳴き声が聞こえてきます。

これはカケスという、ハトぐらいの大きさの野鳥で、一年中この地域に棲んでいる留鳥です。めったに姿は見られませんが、秋になってドングリが実る頃に、里山へ降りて来るのです。

カケスの英名はJayで、まさに鳴き声そのもの。たまにJoyとも鳴いているような気もして、楽しくなってきます。

しかし、今年は猛威をふるっている「ナラ枯れ」のためか、ドングリの数が少ないようで、カケスはどうやって冬越しのドングリを集めようかと、悩んでいるかも知れません。ちょっと心配になってきました。

これまでのように人間だけが元気であっても、多くの生物多様性を維持してはいけません。

それは小規模集落元気作戦に取り組んでいる我々にも、すべからく当てはまることで、すべての多様性を大事に、大切にして行かなければいけないと思うのです。

この10月には愛知県名古屋市において、生物多様性条約第10回目締約国会議(COP10)が開催されます。皆さんは生物多様性について、考えたことはありますか?