_山城げんき村 むらびとがドラッカーを読んだら?その1

「あらゆる組織において、人は最大の資源である」 P・F・ドラッカー

世界が限界にきづいた時

 僕を(%ニコ男%)ニコ男と呼んでください。大学ではいつも、ほぼそう呼ばれているからです。
 僕は『世界が限界にきづいた時』と題することになる論文のフィールド調査のために、大学のゼミの一員として、山城げんき村を訪れていました。
 それは、世界的にもジャパン・シンドロームとも呼ばれている。急激に進行している少子高齢化と人口減少という、地域的な経済的でもあり、地理的でもあるこの現実を。山城げんき村ではどう乗り越えていくのか、最適な問題解決を模索する論文となるはずでした。
 それまで多自然環境といえるような場所で暮らしで事が無かったので、日本の田舎の景色のなかに溶け込んで、生活している人々と話をしてみたくて、ケーススタディとして興味があったのです。
 『世界が限界にきづいた時』は、環境経済学の立場をとった論文になるはずでした。そのころ僕は環境経済学の修士課程だったのです。
 いま僕は世界最高の経営学者だったP・F・ドラッカーの信奉者です。
 もし当時まわりにドラッカーの経営学・社会学を教えてくれるものがいたなら、僕は大学に入ってすぐ、P・F・ドラッカーに心酔していたでしょう。でもP・F・ドラッカーの経営哲学については、まだ岩崎夏海の小説の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』がようやく発売された頃だったので。やがて日本でドラッカーのブームが起こる事も。僕は高校の野球部の女子マネージャーが、偶然に手したドラッカーの『マネジメント』の内容を、野球部の改革に活かしてゆく、内容すらも興味なかったのです。
 われわれP・F・ドラッカーの信奉者は、人が長所と短所をあわせもっている存在であることを知っています。
 P・F・ドラッカーは、人のすばらしさは、強みと弱みを含めた多様性にあり。同時に、組織のすばらしさは、その多様な人ひとりひとりの強みを組み合わせて、人の弱みの意味も存在もないものにすることにある。
といっていました。
 僕が今のようなP・F・ドラッカーの信奉者になることになったのは、おそらく未完に終わった僕の論文の『世界が限界にきづいた時』がきっかけだったのでしょう。

真摯(しんし)さ、まじめさ、ひたむきさ

 マネジャーは、人という特殊な資源とともに仕事をする。人は、ともに働く者に特別の資質を要求する。人を管理する能力、議長役や面接の能力を学ぶことはできる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて人員開発に有効な方策を講ずることもできる。だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。
 それは真摯(しんし)さである。
 真摯とはまじめで、ひたむきなことである。器用な才覚や能力よりも、真摯さが絶対に必要である。
 真摯さの定義は難しい。だが、マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如を定義することは難しくない。
 強みより弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。できないことに気づいて、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる。
 何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者をマネジャーに任命してはならない。仕事よりも人を重視することは、一種の堕落であり、やがては組織全体を堕落させる。
 真摯さよりも、頭のよさを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常なおらない。
 部下に脅威を感じる者を昇進させてはならない。そのような者は人間として弱い。
 自らの仕事に高い基準を設定しない者もマネジャーに任命してはならない。そのような者をマネジャーにすることは、やがてマネジメントと仕事に対するあなどりを生む。

「マネジメント−基本と原則」【エッセンシャル版】第6章「マネジメントの機能」 P・F・ドラッカー

マネジャーが、いねじゃー

 僕こと(%ニコ男%)ニコ男が、ここで”むらびと”と提議して呼んでいるのは。日本の兵庫県にある、典型的な中山間地の集落のことで、限界集落に近づきつつあることにきづいた住民のことなのです。
 山城げんき村とは、兵庫県が『小規模集落元気作戦』の名のもと、人口が減少し高齢化が進んだ小規模な集落の再生にむけて、住民の主体的な取組を支援していて、そのプロジェクトに参加している集落のひとつなのです。
 大学からゼミで何度も通っていますけれど、むらびとの皆さんが小規模な集落の再生を目指して、主体的に取り組もうとしている姿勢が、未だに感じられませんでした。
 いつも会議ばかりしていて、少しも結論が出てこないのです。まるで何も決めるつもりもなくて、ただ話をして時間を過ごす事が、楽しくて仕方がないようにも思えました。
 この山城げんき村という名称についても、5回目の会議でようやく決まったのです。しかも組織としての致命的なことに、だれも責任を負うのを嫌がって、これまで代表の理事しか決めることが出来ていませんでした。
 山城げんき村のむらびとの皆さんには、ドラッカーの言っている真摯さがないのでしょうか。
 我々は、生まれた時には真摯さを持って生まれてくるのですが、成長するにしたがって色々な経験をします。悪い経験を繰り返す事によって、心が荒み、人を恨んだり、妬んだり、憎んだりする事によって、心が汚くなってしまう事があります。すると、人が信用できなくなったり、先入観で人を見たり、偏った思考を持ったり、自分にとっての損得だけで物事を判断してしまうような人間になってしまうのです。当然、正直さや誠実さや思いやりや平等公平の心をなくしてしまいます。いや、失くすのではなく、隠れてしまうのです。ですから、ドラッカーは「真摯さを身に着けている人」は選ばれた特別な人だと言っているのではなく、誰でも持っている資質であると言っているのです。
 それでは、これからどうすれはいいのでしょう。大学のゼミのフールド調査も思うように進みません。なんとかして協力してもらわなければ、困ったことになります。山城げんき村のむらびとの皆さんに、どうにかして行動を起こしてもらわらなければならないのです。その時ひとつのアイデアが閃きました。
 この山城げんき村にマネジャーがいないのなら、すべてのむらびとの皆さんが、マネジャーの資質を持てればよいのではないでしょうか。

ボスの見分け方

(マネジャーには)
根本的な資質が必要である。真摯さである。・・・・中略・・・・

事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。

このような素質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきがいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジャーとしても、紳士としても失格である。

マネジャーの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくても学ぶことができる。しかし、学ぶことができない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」P.18 岩崎夏海

ヒーローは、真摯・自由・協同がモットー(motto)

 (%ニコ男%)ニコ男の大学の使命とビジョンは、開放的で国際性に富む固有の文化の下、「真摯・自由・協同」の精神を発揮し、人類社会に貢献するため、 普遍的価値を有する「知」を創造するとともに、人間性豊かな指導的人材を育成することです。

〔チャレンジ・フェーズ 2010〜2012〕

大学はグローバル・エクセレンスの実現に挑戦する時代と提議しています。

【到達目標】

研究 : 既存の学術領域、その連携・融合が生み出す新たな学術領域における本学のコア研究により、世界的に卓越した成果を創出していく。
教育 : 本学独自の教育プログラムを通じて、高い見識とグローバルな視野を有し、多様なフィールドで活躍する指導的人材を育成していく。
社会貢献 : 卓越した研究成果の普及、指導的人材の育成、高度先進医療の推進を通じて、世界と地域のために多様な取り組みを展開していく。
大学経営 : ビジョンの達成と、それを通じた構成員一人ひとりの自己実現が調和する組織文化が浸透するとともに、 本学とステークホルダーとの協同関係の成果が産み出されていく。

【行動指針】

《研究》
* 学問の自由を守り、教員一人ひとりが世界的に卓越した研究成果の創出に向けて真摯に取り組みます。
* 既存のコア研究を発展させるとともに、新たなコア研究に全面的な支援を継続的に行います。
* 卓越した研究者が国内外から自由に集える環境を充実します。

《教育》
* 学生一人ひとりに自由の価値と責任を学び取れる教育機会を提供します。
* 教員一人ひとりが精励する最先端の研究成果を教育に反映します。
* 豊かな教養と高い専門性、高度な語学力を有し、多様なフィールドで活躍する指導的人材を育成するため、 国際的に通用する本学独自の教育プログラムを全面的に導入します。

《社会貢献》
* 研究・教育・医療を通じて、社会の発展に寄与する新たな取り組みを実施することにより、世界と地域のために多様な活動を展開します。

《大学経営》
* <大学ビジョン2015>の達成に向けて、〔チェンジ・フェーズ〕における成果を踏まえつつ、更なる経営改革を実行します。
* 本学と多様なステークホルダーとの適切な関係を構築するため、積極的な取り組みを展開します。

この物語はあくまでもフィクションです