(※市民活動センター情報紙の掲載記事を紹介します)

参議院選挙の告示を翌日にひかえた6月のある夕方
ジャーナリストの下村健一さんをゲストに迎え
「この時代に必要なメディアの読み解き方」について
市民のみなさんと一緒に考える講演会を開催しました。

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■ あの“解散騒動”が教えてくれること
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「あの国民的アイドルグループが解散か?という
今年1月のニュース
みなさんはどのように知りましたか?
自分の目や耳で直接?家族や友人から教わった?
それともメディアから?」

下村さんの相次ぐ問いかけに
日頃いかに多くの情報をメディア
(新聞、テレビ、雑誌、インターネット等)から
入手しているかに気づかされます。

1日24時間の中でメディアに触れている時間は
食事や移動の時間よりずっと長い。

とりわけインターネットについては
相手を騙そうとする悪意的な情報の被害者になるリスクだけではなく
悪意はないが間違った情報を鵜呑みにしてしまったり
それらを拡散する加害者になる危険性が潜んでいると
下村さんは指摘します。

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■ 自分の見方を縛らない
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「『事実』と『意見・感想』が混ざっているのが
情報の特徴」と下村さん。

大切なのは、事実とそうでないものとをいったん仕分け
事実についても別の角度から眺めてみること。

それは選挙についても同じで
候補者が自分に有利な主張をするのは当然のこと。

私たちはそれをどう受け止め、意思決定すればいいのでしょうか?

「メディアや政治家の言うことを『全部信じる』も『全部信じない』も
根っこにあるのは同じ『決めつけ』。
自分の見方を自分で縛ってしまわずに
投票後も候補者を見つめ続けていくことが
『民主主義を育てる』ことにつながります」

「『情報を読み解く』とは
ご飯を食べたり道を歩いたりするのと同じように
誰にでもできること」とおっしゃる下村さんに
「キーワード」と「コツ」を教えていただきました。

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■ 窓枠を広げて世界を見よう!
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インターネット、ソーシャルネットワークの発達により
私たちは情報を「受け取る」側から「発信する」側へ
そして「拡散する」側になる機会が格段に増えました。

誤った情報をうっかり広げてしまわないためにも
情報との付き合い方を今いちど見直してみることが必要です。

それは決して「メディアを信じるな」とか「相手を疑え」という
暗い話ではありません。

早い段階で決めつけてしまわない
自分とは異なる見方に対してオープンでいる…
ほんの少し意識してみることで
世界を見る窓枠は大きく広がります。

情報を受け止めるとき、発信するとき、そして拡散するとき
次の4つのキーワードを思い出してみましょう!

★ キーワードその1:「まだわからない」
受け取った情報をいったん保留!
結論は急がなくていい

★ キーワードその2:これは「事実」?それとも「意見や印象」?
受け取った情報を仕分けしてみよう

★ キーワードその3:事実だとしても「他の見え方はないだろうか?」
同じ事実でも、どこから見るかで姿は変わる!

★ キーワードその4:「隠れている情報はないか?」
情報Aの周りには、情報Bや情報Cが潜んでいるかもしれない

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■ 想像力のスイッチを入れたら
いろんな景色が見えてくる!
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テレビや新聞、ネット、口コミなどで日々流れてくる情報には
「事実」と「意見・印象」が混ざるという「特徴」があるように
それらの情報を受け取る私たちの側にも
たまたま見えているものだけで全体を断定し
勘違いしてしまう「クセ」があると下村さんは言います。

この、一部を見て全体を判断する力、つまり「想像力」は
本来は人間が生きていく上で不可欠なもの。

「想像力」を上手に使って
情報を多角的に見る3つのコツを覚えておきましょう!

★ コツ1:「立場」を変えて見てみる
「人里にサルが出た」
サルの世界ではどう報道されているだろうか?

★ コツ2:「重心」を変えて見てみる
「イジメの相談件数が増えた」
良いニュース?
それとも悪いニュース?

★ コツ3:「順序」を変えて見てみる
「走る人」の絵と「走る犬」の絵
順番を入れ替えるだけでストーリーがガラリと変わる!

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■ 最後に
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自分でもわかっているようで気づかなかった
思いこみのクセがたくさんある!と実感した
下村さんのお話でした。

ご紹介したキーワードやコツについては
下村さんの著書、『10代からの情報キャッチボール入門
使えるメディア・リテラシー』(岩波書店)にも
実例を踏まえながらとてもわかりやすく解説されています。

市民活動センターでも閲覧可能・貸し出しも行っていますので
ぜひ手にとってみてください。