1997年にエマージェンシーがカンボジアに足を踏み入れた当時、カンボジアには公的な医療機関というものが事実上存在せず、高額な私立の医療施設しかありませんでした。
カンボジア政府より1ヘクタールの土地の使用許可を受け、1年後に救急センター、診察室、3つの手術室と106のベッド、集中治療室、理学療法室、研究室、血液保管室、X線専用室、薬局、オフィスと子供の患者のための学校を備えた病院を開設しました。
開設の当初から現地スタッフの育成に力を注いできました。医療、看護に関わる知識だけでなく技術的なこと、病院の運営に至るまで。
さらに、現地の新しいニーズに答えるため整形外科、形成外科及び外傷専門の部門も設けました。
そして、少しずつ現地スタッフの自立を促し、最近では外国人スタッフは外科医1名、看護師1名と総務スタッフ1名のみになっていました。
14年の間にエマージェンシーはカンボジアで14万人以上を無償で治療しました。
その間にカンボジアは戦争で疲弊した国から目覚しい発展を遂げる国へと変わり、人々の生活環境も改善され、外国からの援助も増えました。そこで、エマージェンシーはカンボジア政府に病院の運営に対する具体的な協力を要請しました。経済的な支援と、3年間の外科医養成プログラムをエマージェンシーが行うというものです。
2年の間、交渉を続けましたがエマージェンシーの要請は聞き入れられず、私たちの活動を支えて下さる皆様の意思を尊重するためにもこのままカンボジアで活動を続けるよりは同じように医療を必要としている他の国に対する援助をする方がよいと考えるようになりました。そんな時に日本の半田財団よりエマージェンシーの病院の運営を引き継ぎたいという申し出があり、厚生省も交えて話し合った結果3月1日より彼らの手に病院を任せることに決まりました。
病院からはエマージェンシーのロゴは消えますが、病院の門は医療を必要とする全ての人に対して開かれ、患者はエマージェンシーが何年もかかって育て上げた医療スタッフの治療を受けることでしょう。
ゼロから立ち上げ、多くの苦労の末に病院を手放すことは残念且つ心残りでもありますが、この病院がカンボジアの医療の将来を担ってくれるよう、これからも暖かく見守りたいと思います。
Good luck, Battambang!
http://www.emergency.it/cambodia/battambang-surgical-centre.html