(スポーツ公園でラジオ体操をする人たち・川西市水明台4丁目)
2012年5月30日
「無理せず、楽しく続けたい」
<ウオーキングは大人の遠足感覚で>
5月も終りとなれば、4時半を過ぎると夜が明けてくる。さあ、今日も散歩に出かけることにするか。30分ほどで散歩の準備を終えると、気持ちを引き締めて玄関を出る。ウグイスの囀りに誘われて歩くスピードを徐々に上げていく。愛犬と散歩を楽しむ人。お喋りしながらも、軽快な足取りのご婦人たち。ペアルックの塾年夫婦。見ず知らずの方と交わす挨拶がなんとも清々しい。
血糖値の高い私が、朝の散歩を始めたのは約4年前。薄暗い夜明け前から外に出て、次第に明るくなっていく街の景色を見たくて早朝散歩を始めた。日の出の時刻が早い今頃は、5時過ぎには家を出て、多田神社に向かう。拝殿で手を合わせた後、休憩所で冷えた缶コーヒーを飲む。帰りは坂道が多く、日差しが強くならないうちに自宅へ戻るようにしている。散歩の時間は約1時間半。
さて、私の早朝散歩にもウイークポイントがある。寒さが厳しくなる大寒の頃から3月の中旬までは、どうしても外へ出るのが億劫になる。帽子や手袋、マフラーなどの防寒対策はするが、素直に足が玄関に向かってくれず、一大決心をして外に出る。つくづく桜の花が咲く頃が待ち遠しく思う。
ところで、近所の奥さんたち三人は、寒い冬や日差しの強い夏も、毎朝6時きっかりに我が家の前で落ち合って散歩に出かける。行き先は歩いて20分ほどの通称・スポーツ公園。サッカーグラウンド一面ほどの広さがあり、その周囲にはランニングやウオーキングには恰好の遊歩道があり、木立の間にも散歩道がある。
6時30分。公園に集まった人たちは、携帯ラジオから流れる「ラジオ体操」のメロディーに合わせて体をほぐす。ラジオ体操の第一と第二。この二つを真剣にやれば、体にとっては結構な全身運動で、究極のエクササイズ。10分間のラジオ体操が終わると、またグループで歩き始める人、ストレッチを続ける人、雑談を交わしながら自宅に戻る人など。このように、一日の始まりとして公園に集まることが習慣となっている人たちがいる。
近頃、私は早朝散歩を無理なく、楽しく続けられる工夫はないものかと考える。そのためには、その日の気分や体調によって自由に選べるコースを新たに開拓するのも必要だ。また、メモ用紙とペンを持って、感じた時に、五・七・五で書きとめるのも一興。ただ、散歩を続けるには何よりも一緒に歩く仲間が二人、三人といればよいのだが、一番身近にいるカミさんが散歩に出たがらないので困っている。
そこで、散歩やウオーキングを継続中の方、これから始めようとお考えの方に、健康のためだけでなく、歩くことが楽しくなる工夫、継続の動機づけとなる各地の例会や大会への参加、快適で便利なグッズの利用など、ウオーキングを楽しむコツを次に紹介させていただきたい。
(写真:木立の間にも遊歩道があるスポーツ公園)—->
『<55プラス> 続けたい!ウオーキング①』
「楽しみ採り入れ、無理をせず」
2011年11月4日付け朝日新聞より引用
やわらかい日差しが注ぐ平日の午前9時半。埼玉県入間市のファイナンシャルプランナー山神克允さん(67)は、妻(67)に見送られて自宅を出ると、軽やかな足取りで歩き始めた。家々の玄関先にはコスモスやキンモクセイが咲き、チョウチョが舞う。道ばたの小さな花にも「よく咲いたね」と声をかけ、小型のデジタルカメラで次々にシャッターを押す。
「ただ歩いているのはつまらない」と、カメラを持ち歩くようになった。1回のウオーキングで200枚を超え、厳選したものを「花ブログ」で公表。生活の張りになり、「花に会いに歩くようなもの」と笑う。ウオーキングを楽しむ工夫をすることが、20年近い長続きのコツだ。
この日も、30分ほど歩くとスピードを上げて早足歩きに。強度に変化をつけるためだ。水分補給に立ち寄った公園では、子どもたちの笑顔に元気をもらい、河川敷では、両手のひらをすぼめて両耳の後ろに当てる「自然の集音マイク」で音量を上げ、せせらぎを体いっぱいに流し込む。
飽きないように、景色や距離が異なるコースも五つ開拓した。「テンションを上げるにはおしゃれに」と、赤いチェックのシャツと、左右のつばを折り上げたカウボーイのような帽子は必需品だ。自宅にもどったのは3時間後の午後0時半。歩数計の表示は1万3645歩、距離は9.1キロ、消費カロリーは541キロカロリー。でも、「数字はあくまで目安。こだわりすぎず、無理せず気楽に楽しく」。
それは、「失敗」からの教訓だ。会社員だった49歳の時に糖尿病を患い、医師から運動を勧められた。いつでもどこでもできる、と国が示す目安の1日1万歩を目標にウオーキングを始めた。初めは順調だったが、1年ほどしてひざを痛めて休止。「がんばり過ぎの典型でした」。
昨年は、旅行先のスイスの山道で転び左足首を骨折し、最近は思うように体重が減らないこともある。それでもウオーキングを続けるのは、「健康のためだけでなく、歩くことが楽しいから」。自ら打ったうどんを妻と味わい、花の写真に目を細めた。(森本美紀)
『<55プラス> 続けたい!ウオーキング②』
「姿勢と速度から見直そう」
2011年11月5日付け朝日新聞より引用
ひざや腰に痛みが出たり、歩数にこだわりすぎて疲れたり。シニア層がウオーキングを断念するのは、こんな理由が多い。「100歳まで歩こう」などの著者で健康運動指導士の黒田恵美子さん(48)は、「姿勢がゆがんでいたり、関節が硬いまま歩いたりしていませんか? 楽に長く歩き続けるには、ふだんの歩き方の質から見直しましょう。1万歩だらだら歩くより、5千歩しっかり歩くほうが生活習慣病の予防にも効果的です」。
「質」とは、きれいな姿勢と、適度な速度だ。黒田さんが勧める歩き方の基本は次の通り。「体に合った歩き方」 ①おへそのあたりを軽く引っ込める、②一直線を踏まないように、線をはさむように足を運ぶ、③自然にかかとから着地する、④左右の腕を平行に、後ろへ意識して振る。特に、後ろに腕を振り、おへその下に力を入れる。
姿勢がいいと、足がすっと前に出て歩幅が大きくなる。動作が大きいと関節の動く範囲が広がり、硬い筋肉が目覚め、体全体が動きやすい。その結果、筋肉が引き締まったり、消費カロリーが増えたり、健康度がアップする、というわけだ。ただ、長時間歩く時は同じ姿勢だと疲れることもある。ひじを曲げたり歩幅を小さくしたりして調整を。
健康にいい速度は、いくらでも歩けそうと感じる「楽」から、息が荒くなる「キツイ」の中間の「ややキツイ」。体が温まって軽く息がはずむ感覚だ。余裕があるなら、坂道や階段など高低差をつけると運動強度は上がる。「10分ずつでも1日に30分しっかり歩けば、減量効果があるという報告もある。通勤や買い物でも意識して」。
歩く前後のストレッチも大切だ。けがの予防や疲労回復を助ける。「玄関先でもできる」と教えてもらったのは、①肩甲骨と腕をほぐす「ひじをギューッパッ」→ひじを後ろに引き、5秒キープしパッと力を抜く。2、3回繰り返す。②股関節を柔らかくする「足回し」→片足のひざを前に直角に曲げて、内側から外側に回して下ろす。左、右交互に5〜10回ずつ繰り返す。
黒田さんの歩き方教室に通う埼玉県の大田千恵さん(50)は、歯磨きしながらつま先立ちをしたり、風呂掃除をしながら腕を回したり。「ひざや肩の痛みがなくなり、歩くのが楽しい。何歳になっても自分の足で歩き続けるのが目標です」。(了)
(写真はスポーツ公園の遊歩道とグラウンド)——>
『<55プラス> 続けたい!ウオーキング③』
「観光兼ね、多彩なコースへ」
2011年11月6日付け朝日新聞より引用
東京都の小林昌仁さん(77)、容子さん(62)は、国内外のウオーキング大会に参加するのが夫婦の楽しみだ。10月は、松尾芭蕉の足跡をたどる、「平成・奥の細道ウオーク」(日本ウオーキング協会主催)に参加した。
2003年、東京都の富岡八幡宮をスタートし、毎年4、9、10月に2〜3日歩き、13年に三重県の伊勢神宮でゴールする予定。17都県を巡り、2500キロメートルに及ぶ。今回は、500人以上の仲間と、新潟県糸魚川市から富山県朝日町へ37キロ歩いた。翌週は、トルコであったウオーカーの祭典、「IVVオリンピアード」(国際市民スポーツ連盟主催)へ。
「健康にいいうえ、観光も兼ね、見知らぬ風景や土地の人と出会うのが最大の楽しみ。木々の香りや店先から漂うおいしそうな匂い、人々の声。五感が刺激され元気が出ます」と、ウオーキング歴16年の昌仁さん。6年前にがんを患った時も、もとの体になろうと1日約4キロを毎日歩いた。
夫婦で訪れた国はスイスや韓国など20ヵ国以上。国内大会は最低でも年に7、8回。「奥の細道」ではイカスミのブラック焼きそばなど、ご当地グルメを味わい、トルコではカッパドキアの世界遺産を堪能した。容子さんは、悪性リンパ腫の治療を経て、仲間に再会した喜びが忘れられない。「病気で体力が落ちた時、掃除機をかけるだけで休んでいた私がウオーキングを続けられるのは、友人に会えるから」。
東京都ウオーキング協会の山崎恭夫事務局次長(70)は、「各地のウオーキング協会の例会や大会は、変化に富んだコースが盛りだくさん。自然や名所を巡る『ながらウオーク』は、継続の動機づけになります」。同協会は、12月の山手線一周やお正月の七福神巡り、春の多摩川ウオークなど、年間100回近い例会や大会を企画。
5〜40キロと距離もさまざまで、初心者も健脚者も飽きずに続けられる趣向を凝らす。参加回数や距離に応じて表彰もある。ベテラン指導員の小谷好美さんらが歩き方を教えるウオーキング教室は、月2回。10月は太宰治の墓や国立天文台などの見学を交え、「大人の遠足のよう」と好評だった。(了)
『<55プラス> 続けたい!ウオーキング④』
「快適グッズでやる気アップ」
2011年11月7日付け朝日新聞より引用
快適で便利なグッズがあると長続きしそうだ。「エスポートミズノ」(東京都)は、ウオーキング用の品ぞろえが豊富。寒い季節に役立つのが、ミズノが開発した「ブレスサーモ」という繊維を使った衣類だ。汗を吸収すると発熱して温かく、吸湿・速乾性があり、べたつかない。
アンダーウエアや巻きスカート、ダウンジャケット、ネックウオーマーなどにも使われているので、コーディネートも楽しめる。店のお勧めは、足長効果が期待できる巻きスカートとタイツ、ショートパンツとスパッツの組み合わせ。サポーター機能があるスパッツは、筋肉疲労を軽減しやすい。
ミズノの靴は、ひざや腰への負担を軽くするクッション性と、体のぐらつきを抑える安定性が特徴だ。靴選びのため、店内のコンピューターで足形を測定し、足に合うインソール(中敷き)も注文できる。人間本来の歩行を目指し、柔らかい土の上を素足で歩くような感覚を再現したのは、スイスの会社が開発したMBTという靴。底が船底のようなカーブ状で、姿勢を正し筋肉を活発に動かすという。
歩数計は、バッグやポケットに入れるタイプや、ゲーム性を採り入れたものが人気だ。山佐時計計器の「新・平成の伊能忠敬」は、歩数が距離に換算され、画面上に日本地図の海岸線が延びていき、約1万9千キロで地図が完成する。
セイコースポーツライフは「四国八十八箇所巡り」のほか、腕時計型、厚さ8.9ミリの薄型などもある。NTTドコモの携帯サービス「i Bodymo」は歩数データを集計して自動的に全国順位に反映したり、健康アドバイスをメールで届けたりしてくれる。
ウオーキング用の靴と歩数計を身につける東京学芸大学の池田克紀教授(64)=健康科学=は言う。「グッズを利用し、心地いいウオーキングを見つけてほしい。歩くことは人間のDNAに組み込まれた動き。歩き続けることは究極の健康法であり、生き方に変化を起こします」。(森本美紀)